摂氏40度に近づきそうな温度計と、湯気と見紛う程に熱い水蒸気を吸って昇りつめた湿度計。……フロリダ半島は夏の真っ只中にいた。大西洋に面して、櫛の目をいくつも合わせたような運河が縦横に走るカナルシティ・フォートローダディールがここにある。その美しいカナルシティを見るため、早朝に、小船に乗って運河に出た。鏡のような水面を滑りながら、無数に並ぶ美しいヨットやモータークルーザーを眺めて楽しんだ。紺碧の水面は、映り込んで輝きを放つ船に生命を与えられ、美しく揺れていた。そして、太陽のリフレクションが無数に輝き、星座のように見えていた。小宇宙の出現に見惚れている内に、夢の中に入り込んでしまったらしい。私の足元にたちまち木のデッキが出現し、赤い夢を、目の前の天の川に蘇らさせた。珠玉のひとときが、ここに実現した。

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